一宮基督教研究所・研究図書目録

天川潤次郎論文集リスト

15/03/28


    天川潤次郎教授は、私が関西学院大学経済学部に在籍のときの三年と四年のときのゼミの先生である。大学の二回生の十二月に西宮福音教会において洗礼を受けた私は、専門分野のゼミ選択の時期であった。そのようなときに、ゼミ紹介の中に天川教授のゼミが紹介されていた。すぐれた就職先のためには「優」がいくつあればどこそこのゼミに入れるという話も飛び交っていた。ゼミの選択が就職先の選択と結びついているかのようであった。私は、入学以来「生きる意味」を求めて、それをキリスト教信仰の中に見出したばかりであった。「生きることはキリスト(新約聖書ピリピ書)」。私はこれからの生涯を新しい意味で「すべての領域においてキリストを見出し続けること、キリストを探求し続けること」に賭けていた。そのようなときに、天川教授は「イギリスにおける経済と宗教的基盤−天職意識において−」というようなゼミを準備しておられた。私はそこに自分の信仰を新たに展開し深めていく領域、学問と信仰の両立しうる領域を見出したように感じた。大学の一、二年を人生に迷い、学問への動機づけを喪失していた私は再びささやかながらではあるが「学究生活」を取り戻した。先生の資料を用いさせていただいて卒業論文「天職意識の喪失過程(静的社会−封建社会における天職甘受説、動的社会−エンクロージャー・ムーブメント等産業社会の発展下における天職選択説、大規模産業社会における人間の部品化など)」を書いた。卒論作成においてたくさんのキリスト教関係の書籍、聖書解釈、倫理、経済など読書する機会を得た。その学びはいままでのよに「受け身の学問」ではなかった。自らの興味と関心、自らの「生きる意味」を賭けた主体性をもって動機づけられた学問であった。ゼミは楽しくてしかたのないものとなった。ゼミ合宿のときに原書で”Trademan’s Calling”を読んでいったことがあった。その文章の中で先生にも分からない箇所があった。「女の人が後ろを振り返って、塩の柱となる」という文章であった。「どなたかわかりませんか。安黒さんはどうですか」と聞かれた。急に飲酒をやめたので、みんなは私がクリスチャンであることを知っていたからである。私はすでに何度か聖書を通読していたので、その箇所は創世記のソドムとゴモラの滅亡におけるロトの妻の記事であることがすぐに分かった。私が手持ちの聖書を開いて淡々と説明すると、みんなが感心してくれたことを思い出す。天川先生は、クリスチャンではなかったが、マックス・ウェーバーの研究で有名な東大の大塚久雄ゼミ出身で、私たちに「宗教社会学的な思考」をいろいろと教えてくださった。残された大学生活を有意義なものにしてくださったご恩は忘れることができない。そのころに先生の論文をたくさん熟読させていただいたが、その後も先生の執筆への情熱は衰えることはなかった。卒業後、約二十年が経過した。先生の最近までの論文を読むことは長年の私の念願であった。そのきっかけとなったのは、東京キリスト教学園の共立基督教研究所で三年間学んだときに、聖書の啓示に根ざした学問形成の可能性をみたときである。宇田進教授や稲垣久和教授、そして丸山忠孝教授からは「信仰と学問」に関する広い視野と高い識見を学んだ。現在、一宮基督教研究所で「組織神学」と「歴史神学」を教えさせてもらっている。とくに歴史神学を教えるときには、立体的な認識がかなり重要である。天川先生の資料は私に与えられた「神学教育」の使命達成に有益な資料なのである。以下に天川教授の論文リストを掲載しておく。これらの論文は、関西学院大学図書館のBM階に所蔵されている。産業研究所の管轄なので、特別の人しかみることができないものである。産業研究所の所員の人の好意と図書館に勤務する関西学院時代の親友、戸田隆くんの支援によって、その資料をコピーすることができた。関西学院の図書・資料が主の栄光のために、広く学問研究のために用いられんことを祈りたい。

  1. 十七世紀初頭の冒険商人組合の機構と貿易

  2. 十六・七世紀の英・西関係をめぐる私拿捕船

  3. ドイツ産業近代化に対する国家の役割

  4. 十八世紀イギリスにおける新商業取引方法の発展と産業革命

  5. 十字軍・文芸復興・宗教改革・地理上の発見の経済史的影響

  6. 産業革命前夜のイギリスにおける機械技術と分業の状態

  7. 産業革命前夜におけるイギリス・ブルジョワ社会の一様相

  8. デフォーの奢侈論

  9. ロビンソン物語」における宗教倫理と経済

  10. 英・蘇合併(1707年)について (1)−デフォーの著作を中心として−

  11. 英・蘇合併(1707年)について (2)−デフォーの著作を中心として−

  12. 資本主義の精神と啓蒙思想

  13. プロテスタントの倫理」と「資本主義の精神」再考

  14. イギリスにおける近代的工場経営の起源

  15. 資本主義精神起源論争におけるヒューマニズムの地位−初期ピューリタニズムにおける「天職論」と「家庭倫理」の変容過程−

  16. アメリカにおける資本主義精神の形成過程

  17. メゾディズムと資本主義・社会主義

  18. カーネギーの経営理念とプロテスタントの倫理