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聖書解釈の三類型
直観的・科学的・文化脈的
11/07/19
前回は宇田師のノートより「組織神学界」の状況について紹介させていただきました。その要点は「コンテンポラリー(今日的)な状況へのコンテクスチュアルな神学が必要とされている」ということでした。
今回は、そのコンテクスチュアルな神学の形成の基礎作業の部分を担う聖書解釈学の領域から、ルネ・パディリアの”CONTEXTUAL(文化脈化)”アプローチを紹介させていただきます。
T.聖書解釈における文化等の影響
「神の民が神の御旨と一致した生活をするためにみことばがあたえられたが、書き記されたみことばと信者によるその適用とのあいだには、解釈あるいは解釈学という過程が存在する。ひとりひとりが聖書の意味に到達する過程には、個人によって形づくられる面ばかりではなく、特定の文化や特定の歴史的状況に見られる社会的な影響力、様式、観念、によって形づくられる面がある。」
U.聖書解釈の三類型
@「もっとも一般的な解釈の方法は、『直観的』アプローチとよばれる。・・このアプローチは、個人の直接的適用を強調しがちであり、テキストの原初の背景を探求せず、最初の聴衆や読者がこれをどう理解したかも問わない点に弱点がある。古典的な注解書、現代の大衆説教、霊想書に数多くの例が見いだされる。」
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現代の聖書の伝達内容 |
原初の聖書の伝達内容 |
A「『科学的』アプローチは、これと対照的で、文学批評、歴史学、人類学、言語学などの成果を用い、大多数の聖書学者によって用いられ、まじめな聖書研究に関心のある、教育を受けたキリスト者によって受け入れられている。この方法は、原初のテキストの意味を理解する点においては申し分ないがテキストを個人
に適用する点において弱点がある。」
原初の文化脈 |
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現代の聖書の伝達内容 |
原初の聖書の伝達内容 |
B「第三のアプローチは『文化脈化』のアプローチである。直観的方法や科学的方法の長所に加えて、文化脈化の方法は現代の読者が、テキストに耳を傾けて理解する過程で、現代世界のもつ役割に関する理解をつけ加える。神のことばは、特定の歴史的文化脈の中で、すなわち、ヘブライ世界とギリシア・ローマ世界の中で生まれた。神のことばは、実際に、あらゆる特定の文化様式の中で、ある特別の歴史的状況の中に『肉体』をとることによってはじめて理解され、また適用される。解釈学は、原初の歴史的状況から、現代の読者の歴史的状況に伝達内容を伝え、最初の聴衆や読者に引き起こしたのとおなじインパクトを、現代の読者にあたえるという課題に挑戦する。」
現代の文化脈 |
原初の文化脈 |
現代の聖書の伝達内容 |
原初の聖書の伝達内容 |
V.解釈学的螺旋の四つの要素
「どうすれば過去と現在のあいだのギャップに橋渡しができるか。その解答は、文化脈化のアプローチに見出される。・・この解釈の過程は・・解釈者とテキストが相互にかかわりあう『解釈学的螺旋』とよばれる。この螺旋には四つの要素がある。@解釈者の歴史的状況・・解釈者は歴史的な真空地帯に生きているのではなく、特定の文化の中で具体的な歴史的状況を味わいつつ生きている。解釈者は言語ばかりか、思考方法、生活態度、学習方法、感情的反応、価値観、関心、人生の目標などを自分の文化から身につける。神のことばが解釈者に届くときには解釈者の属する文化を媒介として届く。」
「A解釈者の世界観・人生観・・解釈者が自分の特定の視点から、聖書にアプローチする。解釈者は自分自身の世界観や人生観をもち現実を把握するための自分の方法をもつ。そしてテキストのあらゆる解釈に解釈者の世界観、人生観が含まれる。」
「B聖書・・解釈学は、聖書と現代の歴史的な状況との対話とかかわらなければならない。解釈学の目的は、聖書の伝達内容を、その原初の文化脈から、二十世紀特有の状況に移すことである。」
C神学・・文化が神学の形成に決定的な役割を果たしていることは、いくつかの視点から明らかである。事実、神学は解釈の産物である。受肉の原理に真実であろうとすれば、神学は特定の状況に根ざしていなければならない。・・神学はほかの文化的地域から借用した教義を、ただ単に繰り返すものでない。神学が現代に妥当性をもつためには、現代の歴史的状況の視野とテキストの状況の視野をあわせもたなければならない。・・過去に霊感を与えたのと同じ聖霊が、具体的状況の中で、神の人格的なことばとして、現代に働きかけておられるからである。」
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○R.コート、J.ストット共著「地の深みまで−キリスト教と文化序説−」すぐ書房
(抜粋・編集:安黒務)