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日本福音教会 あれこれD(安黒試論)

歴史神学の視点からみたJEC

礼拝説教について思うこと

17/06/03


日本福音教会 補教師セミナー '98.11/9〜11 山崎チャペル 安黒務

1.歴史神学の視点からみたJEC

* 神学的・教理的要素…聖書信仰にたち、論理的体系的教理をもつ(シーセン、エリクソン)

* 歴史的要素…福音派における多様性の背後に特定の歴史的運動が介在(バプテスト運動、ケズィック運動、カリスマ運動など)

* 社会的・文化的要素(北欧スウェーデンの気風、簡素で実質重視、主体性の尊重、中庸・バランスの尊重、多様性を許容するキャパシティ)

 

1. オレブロ・ミッションから継承している恵み

* 使徒的キリスト教…JECは「使徒的キリスト教を継承し、それを熱烈にあかしする者である。」

* 古代の正統信仰…JECは「あらゆるところで(公同性)、常に(古代性)、すべてによって(一致同意)信じられてきた」正統信仰の根幹を基本としている。

* 宗教改革の三大原理…JECは「聖書のみ」「信仰義認」「聖徒の交わりとしての教会」(万人祭司)の三点、この三大原理を忠実に継承するゆえに、宗教改革のすえである。

* 英国のプロテスタント…JECは「ジュネーブのカルヴァン主義からローマ・カトリックへと揺れ動いたあと、中道すなわち英国国教主義に進んだ英国聖公会から分かれていったバプテスト」にルーツをもつ、スウェーデン・バプテスト系オレブロ・ミッションにルーツをもつ。

* 正統主義神学…JECは「宗教改革の果実が神学的体系に組織化された正統主義神学」にヘンリーシーセンやミラード・エリクソンの組織神学のルーツを見出す。

* 敬虔主義…JECは「ウォッチマン・ニーの『キリスト者の標準』などに表現されているように正統主義神学を正統主義実践にむすびつけようとする敬虔主義運動の性格」を宿している。『キリスト者の標準』は英国のケズィック運動のメッセージを整理したものである。

* 自由教会の伝統…JECは「教会と国家とがはっきり分離した社会において独立と自治を有するタイプの教会であり、目的を同じくする者の自発的共同体としての教会」である。JECの目的とは何であろうか。それは「開拓伝道、教会形成、神学教育の三要素を整合した上になされる世界宣教の推進」ということではないだろうか。

* 福音主義同盟…JECは「オレブロ・ミッションが世界福音同盟に所属しているように、JECの神学的立場は世界福音主義同盟と同じである。」ただ、日本福音同盟はペンテコステ・カリスマ・第三の波に対してアレルギーをもっているので、現在日本の福音派は改革派系とホーリネス系などの「日本福音同盟」とペンテコステ・カリスマ・第三の波の流れの「日本リバイバル同盟」に分かれている。

2. 関西聖書神学校(塩屋)を通しての恵み

* 「聖め」の信仰…メソディズムとも呼ばれる。「新生に続く、新生とは別個の明確な霊的経験」を強調する。

* バプテストの聖化理解は、一般的に漸進主義的である。一生涯かけての成長過程のように理解する。

* ウォッチマン・ニーの聖化理解は、ケズィック運動のメッセージを背景としており、危機主義と漸進主義を折衷したものである。「私たちの古き人はキリストともに十字架につけられた」というみことばの聖霊による照明の経験を原理とし、経験の多様性を認める。ケズィックの聖会においても、さまざまな教派からの講師により、「聖化の促進」という基本テーマにそって多様なメッセージがなされている。

3. 北米からのカリスマのチームを通しての恵み

* 今世紀初頭からのペンテコステ運動、そして今世紀中期から伝統的教派内におけるカリスマ運動、そして今世紀後期における保守福音派内における第三の波という聖霊運動がある。

* JECが影響を受けたのは、今世紀中期からのカリスマ運動であり、聖公会のカリスマ運動の指導者、デニス・ベネットの「朝の九時」や「聖霊とあなた」などはよく読まれた。

* JECにおけるカリスマ運動に関する資料としては、拙稿「聖霊のバプテスマの神学と経験に関する一考察」、拙論「J.D.G.ダンの『イエスと御霊』に関する一考察」などがある。

* その他、伝統的神学の継承と今日における神学の状況、さらに神学の将来への展望までを視野に入れたミラード・エリクソンの組織神学著作集の翻訳・講義テープを製作中!関心のある方は、山崎チャペル 安黒務(пD0790-63-0252)まで。 

 


2.礼拝説教について思うこと

  1.  委員の先生方がいろんなことを指摘されると思いますので、ひとつだけ書かせていただきます。
  2.  「ひとつの説教にあまり多くのことを盛り込まない。ひとつのとき(One Time)に、ひとつの主題(One Subject)の、ひとつの面(One Aspect)を語る。」と言われます。また、逆に「説教は教派の主張のみを語ってはいけない。すべての教理についてはっきりと語らねばならない。調和のとれた総合性のある説教をしていかねばならない。」とも言われます。わたしたちはどうすればよいのでしょう。
  3.  ひとつの解決法として、長期的視野にたち、ライフ・メッセージ・プランをもつことです。神さまから与えられたメッセージをトータルに説教していくために、メッセージの全体図をもつことです。
  4.  そして、個人的に与えられたヒント、大きな集会でもらったメッセージ、書物から得た証し、その他いろんな材料をそのライフ・メッセージ・マップの中に位置づけるのです。そして、会衆の必要に応じて全体図を意識しつつ、One Time,One Subject,One Aspect を語るのです。
  5.  全体図について申しますと、それの参考となるのは、聖書のメッセージの全体図を描いているところの組識神学ということになりますが、これは大きすぎるでしょう。
  6.  クリスチャン生活で最も身近な領域は、聖書論、神論、人間論、キリスト論、救済論、教会論、終末論の中で、「救済論と教会論」でしょう。
  7.  救済論のメッセージ・マップで、一番ポピュラーなもののひとつは、ウォッチマン・ニーの「キリスト者の標準」です。この書物はローマ書の講解を中心にしており、典型的な救済論メッセージ・マップです。
  8.  「キリスト者の標準」のメッセージと構成の資料源は「ケズィック運動」であるといわれています。ウォッチマン・ニーのある書物には問題があるといわれていますが、「キリスト者の標準」は「ケズィック運動」を背景にし、さらに教会史においては敬虔主義運動(正統的教理を生活実践に結び付ける運動)の遺産を継承するもので、きわめて健全な内容となっています。
  9.  敬虔主義運動の書物の著者としては、シュペーナー、ツィンゼンドルフ、ハレスビー、バンヤン、ウェスレー、ホィットフィールド、ケアリー、スポルジョン、ムーディー、ダービー、ミューラー、フィニー、マーレー、シンプソン、トゥザー、トーレー、マイヤーなどがあげられます。これらの書籍も生活的なメッセージの資料源となることでしょう。
  10.  メッセージ・マップについての話ですが、「キリスト者の標準」の内容構成は、ケズィック聖会のプログラムと酷似しています。月曜が「罪」、火曜「キリストとの同一化」、水曜「献身」、木曜「御霊にある生活」、金曜「奉仕、宣教」というテーマの構成となっています。
  11.  「キリスト者の標準」の内容構成は、1.義認・新生、2.罪からの解放、3.聖霊の賜物、4.神を喜ばせること、5.奉仕の条件・基礎となっています。
  12.  この構成は、組識神学の視点からいえば、救済論をベースにして教会論の視野までメツセージを展開しています。ウォッチマン・ニーの著作集は、救済論をベースにして、他の真理の領域を関連づけながら取り組まれているように思います。
  13.  わたし個人としては、青春期に救われ、その初期に「キリスト者の標準」を通して「福音理解」を刻み込まれたので、ひとつの説教をするとき、この説教は「キリスト者の標準」の説教マップでどの位置にあたるのだろうかと考えます。
  14.  また、語るべきメッセージがわからなくなってしまったときなども、説教マップとしての「キリスト者の標準」を読みかえすことにより、今会衆に語るべきメッセージを見出すことがしばしばです。
  15.  クリスチャンの霊的成長の全体像をしっかりとみつめた上で、今どのへんを語るべきなのかが分かってくるのです。
  16.  「キリスト者の標準」の説教マップは、敬虔主義運動をはじめ多くの著者からの資料を整理して語る枠組みでもあります。
  17.  ケズィックの聖会が組識神学の内容構成に従ったものであるように、「キリスト者の標準」の説教マップは神学的な視点からもきわめて有益な資料といえます。
  18.  あなたのライフ・メッセージ・プランを作成していかれるとき、「キリスト者の標準」を説教マップのひとつとして活用されることをおすすめします。
  19.  「キリスト者の行程」「霊の解放」と洋書の"Changed into His Likeness","What Shall This Man Do?" なども有益な書物です。