Millard J.EricksonHow Shall They Be Saved?- The Destiny of Those Who Do Not Hear of Jesus-を座標軸にして

一宮基督教研究所 理事・教師合同シンポジウム講演:2002年9月17日

死後の回心と救いのチャンスの教え」の問題点を神学的 に分析・評価する(無料資料)


● 補足 関連資料:JEC牧師会講演−“非”『聖書的セカンド・チャンス論』批判:2007年11月13日(有料資料)

2007/11/13

日本福音教会本部事務所

日本福音教会牧師会:安黒

「セカンド・チャンス論」批判

DVD1枚]+資料=2500


●関西聖書学院 理事・教師合同シンポジウムにおいて、最近話題となっています「死後の回心と救いのチャンスについて」の講演のときの資料を関心のある方にお分かちしています。

  なお、この資料は、以前は費用(一冊1000円と送料)をICI支援献金の意味も含めていただいておりましたが、近年レムナント出版より「セカンド・チャンス論」の書籍が諸教会に送られて来ていることを知り、この危機に機敏に対応し、できるだけ多くの方に参考資料として利用していただくことを願い、無料で自由に印刷・コピーしていただくことにしました。講演における参考資料として作成したもので、断片的な資料を急ぎ収録したものにすぎませんが、皆様の群れが守られるための一助としていただければ感謝です。

@     :「死後伝道」に関する箇所の解釈の問題、死後伝道に関する重要参考文献リスト

A     講演「両者の主張の神学的立場の分析」のアウトライン:
歴代の教会の聖書観、解釈の原則、教理形成のプロセス、福音派の救済論での種々の議論、エリクソンによる「死後伝道」の分析と評価等について

B     聖書解釈−エリクソンの書籍よりの翻訳:
「死後伝道」の根拠とされるTペテロ3:18−20,4:6の解釈の問題、解釈の類型、選択肢の吟味、結論

C     比較検討−ハーザー掲載記事:
久保有政師、富井健師、中村準一師、そして先生方の解釈の分析と評価

D     略図:死後の世界、救済論における議論についての理解のため

E シンポジウム報告(大田裕作師:KBI院長)


参考文献リスト


●結論としては、詳細な聖書解釈の結果としてエリクソンが語っていますように、「したがって、結論において、私たちは、明確な聖書の教えが存在せず、そして論点において他のより明確な聖書の教えと矛盾しているように思われる死後伝道の見方を受け入れるかどうかに直面している。アピールされている主な聖書個所は、ロバート・モウンスが「新約聖書のすべての中で、理解することにおいて最も困難な個所と広く認識されている」と語っているものである。そのように曖昧な個所に人間の永遠の運命についての教理を置くことは奇妙なことのように思われる。」という内容となっています。

●資料を作成してみての感想としましては、この主題においても、エリクソンの聖書解釈のプロセスは、「選択肢に対しては偏見をもたない広範さ細部まで正確に分析する力は、それに対する一貫した賞賛を勝ち取ってきました。」とJ.I.パッカーが評している通りのものでした。

●エリクソンの神学書籍に詳しい言及がありますが、英語なので、日本語の関連文献や最近出版されました宇田進師の、この主題に関する資料紹介を追加として紹介させていただきます。私の願いは、特定の団体や教職者を批判することが目的ではなく誤った教えから多くの教会や信徒の方々が守られることです。誤った教えに陥った方々には一日も早く正しい教えに立ち返っていただきたいと思います。

    

, Baker, 1996‥この書籍全体が、福音を聞かずに死んだ人々の運命に焦点をあわせて、キリスト教会全体での幅広い考え方を考察している。

     Millard J.Erickson, “Where Is Theology Going?”- Issues and Perspectives on the Future of Theology –, Baker, 1994, pp.181-196‥福音主義神学の真理の各項目における健在と将来の動向についての研究で、救済論における動向の中で「死後伝道」についての言及がある。

     Millard J.Erickson, “Evangelical Left”- Encountering Postconservative Evangelical Theology –, Baker, 1997, pp.109-130

     Millard J.Erickson, “Introducing Christian Doctrine”, Baker, 1992, pp.361-371‥死と死後の問題、中間状態についての福音派としての基本的スタンスについての要点。

     Millard J.Erickson, “Christian Theology”, Baker, 1999, pp.1172-1190‥死と死後の問題、中間状態についての福音派としての基本的スタンスについての詳述。

     Bruce A.Ware,New Dimensions in Eschatology”‘Destiny of the Unevangelized, pp.358-365, David S.Dockery, Editor,New Dimensions in Evangelical Thought- Essays in Honor of Millard J.Erickson -, InterVarsity Press, 1998‥エリクソンの書籍における「福音を聞かずに死んだ人々」についての議論をよくまとめている。

・ウィリアム・ヘンドリクセン「死後と終末」つのぶえ社、1983pp.54-155‥死と死後の問題、中間状態についての改革派の立場におけるよくまとまった描写。

・『ローザンヌ誓約』いのちのことば社、‥第三項 キリストの独自性と世界性についての記述がある。

・『ウエストミンスター信仰告白』新教出版社、pp.107-110‥人間の死後の状態、また死人の復活について「死後‥直ちに‥神に帰る。義人の霊魂は、‥天に受け入れられ、そこで、彼らのからだの全きあがないを待ちながら、光と栄光のうちに神のみ顔を見る。」の記述がある。聖書の教えを論理的体系的に整理した、最も小さな組織神学書≠ニもいえる、プロテスタント信仰を簡潔にまとめているものなので、すべてのクリスチャンに手元において読んでほしい書籍のひとつである。特に、私の所属していますバプテスト系の教派のように、簡易信条主義≠フ立場の群れの場合、誤った教理から身を守るひとつの手段として、『ウエストミンスター信仰告白』にときどき目を通すことは大いに助けとなる。ただ、教会論のあたりでは見解の相違(長老制と会衆制など)もあるということには留意することが必要である。このあたりは大きな問題ではなく、聖書の啓示が許容している幅ととらえられる。値段は600円(1989年)

・矢内昭二『ウエストミンスター信仰告白講解』新教出版社、pp.302-307‥人間の死後の状態について、Q&A形式でウエストミンスター信仰告白を学べる。

・ヘルマン・バヴィンク『信徒のための改革派組織神学』(下)聖恵授産所出版部,pp.586-587‥「聖書は、この地上が悔い改めときよめのための唯一の場所であることを至る所で述べている。墓のかなたでも福音が宣べ伝えられるといったことは、どこにも述べられていない。‥信者たちは、死後ただちに、その魂において、天におられるキリストのもとに上げられるのである。」

・『ウエストミンスター小教理問答書』、つのぶえ社、p.34-35‥「問37:信者は死の時、どんな祝福をキリストから受けるか。 答:死の時、信者の霊魂は、全くきよくされ、直ちに栄光に入り、その身体は、なおキリストに結合されていて、復活の時まで墓の中に休む。」

・鈴木英昭『ウエストミンスター小教理問答案内』つのぶえ社、pp.140-150

・岡田稔『解説 ウエストミンスター信仰告白』つのぶえ社、pp.178-181死後から復活までの中間状態の解説があり、「天(パラダイス)と地獄(ヘル)、‥この二つの区別ある世界へは、死後ただちに入るために、このうちのどちらかに入るかは、まったくこの世という共通世界での人間の全態度がこれを決定する。」との記述がある。

・A・ファン・リューラー『キリスト者は何を信じているか』−昨日・今日・明日の使徒信条−、教文館、pp.192-197‥使徒信条の中の陰府下り≠フ詳細な解説があり、「イエスはその死において、古い契約の信仰者たちに宣教するために彼らがいる死人の国へと下られた。それは‥彼らを死人の国からパラダイスへと連れ出すためである‥。キリストは死の牢獄の中での宣教を通して‥キリスト教以外の人類にまで手を届かせた、というのです。‥あの難問、すなわち福音を聞かなかったし、聞くことができなかった人びとに対して永遠に何が起こるのかという難問に決着をつけようと試みてきました。‥こうして、キリストの救いは全世界的な広がりのもので、万人に及びます。‥確かにこれは多くの人びとにとって魅力的な考えです。それらの人びとは、特にその際、自分たちにとって大切な人たちで不信仰のままに、あるいは懐疑のうちに亡くなった人たちを考えます。しかし、次のことをよく考えなければなりません。つまり、この考えは聖書の証言に矛盾するもの」であるということです。

・「改革派教会の終末論」−改革派教会世界会議終末論研究委員会報告−、日本キリスト改革派教会憲法委員会第一分科会訳、P.10‥「中間状態は死の結果である。中間状態と呼ばれるのは、それがただ単に一時的だからであり、また、義しい者にも義しくない者にもどちらにも一時的だからである。個人の生の完成は、義しい者と義しくない者の復活のとき再構成される。こうして、中間状態は死と復活の出来事との間に存在する状態を表す。聖書は、この状態について非常に多くは啓示してはいない。なぜなら、聖書啓示は体をもった生涯に多くの関心をもっていて、体のない状態についてははっきり語らないからである。しかし、信じる者たちの慰めと、悔い改めない者たちへの警告のためには、十分な啓示がある。体のない状態は最終の状態ではない。祝福も苦しみも、個人の生の完成が復活によって回復されるまでは、完全ではない。しかし、聖書は、中間状態にいる間に、道徳的・霊的状態が覆されるという証拠を挙げてはいない。人間は、体で行ったことに従って最後に審判される(マタイ25:34,46、ルカ16:25、Uコリント5:25、ヘブル9:27)。それゆえに、祝福か苦しみかの最終的な状態は、死の出来事によって確定される。聖書は、悔い改めないで死ぬ人々に対して、この世を越えて福音の機会が広がっているという希望を与えていない。また、聖書は、信仰をもってこの世を去る人々に対して、キリストとの彼らの関係が来るべき世において覆されるかもしれないという脅かしや警告を与えていない。」

 

● 死後伝道に関係する追加資料として、最近出版されました東京キリスト教学園、名誉教授、宇田進先生の「総説 現代福音主義神学」いのちのことば社、pp.400-403 から関連資料リストを紹介させていただきます。福音主義神学の立場にたちつつ、今日における神学の動向を見渡すことのできるきわめてすぐれた神学書です。ぜひ、お買い求めくだり、ご一読ください。