1997年 JEC(日本福音教会)ニュース 連載記事 

電子メディア時代とJEC

11/07/19

ネット社会における可能性


1. パッチワーク素材の提供

2. 南風が吹いている

3. インターネットとは 

4. フランスでの取り組み

5. JECの百科事典

6. ほぼ一秒で地球を一周 

7. 情報スーパーハイウェイ 

8.意思決定のプロセスの変化

9. 自分の望む視点で 

10. 少数者対象の時代


1. パッチワーク素材の提供

インターネットについての「啓蒙の原稿」をということですが、完成された原稿という
わけにはいきません。おゆるしください。インターネットの情報そのものが「完成された
中身ではなく、パッチワークの素材の提供
」という性格をもっているからです。私の原稿
もみなさんがインターネット時代の到来におけるJECのあり方を考えていただくのため
のいろんな情報の提供という軽い気持ちで書いていきたいと思います。


2. 南風が吹いている

このような記事を書きますと「インターネットを使わなければ時代に置いていかれる
という強迫観念を感じられる方があるかもしれません。しかしいままでのインターネット
の発展の歴史の中では、そういう発展の仕方をしたことは一度もないそうです。「インタ
ーネット時代」は北風の到来ではないのです。そうではなく「こんなによいことがJEC
に起こるのだ、JECにとってこんなに有効なものなのだ
」という気持ちのよい南風がそ
よぎはじめたのだ、ということなのです。


3. インターネットとは

インターネットとは、「世界中のすべてのコンピューターをつなぐコンピューター・ネ
ットワーク
」のことです。私たちには次の時代の教会形成と宣教というものを考えていく
上で、インターネット上に築かれる新しい国際社会や生活についての理解が必要とされて
います。人間はいままで文化的、知的財産としてもってきた情報や知識を、いままでのア
ナログ情報では紙、フィルム、磁気テープなど、それぞれ別のものに記録されていました。
これまではそれらバラバラの情報を持ち運ぶしかなかったのです。しかし技術の進歩によ
り近年においては、デジタル情報(数値による表現。電子的には電流のオン・オフに対応
させた1と0の二つの値をもつデータの集まり
)として表現することができるようになっ
てきたおかげで、それらの異なる種類の情報をすべて一緒に、しかもコンパクトに記録し
一瞬のうちに電送できるようになりました。インターネットは、このデジタル情報の特徴
により、知識や情報を世界中で自由に交換、共有するためのインフラストラクチャー(
盤施設
)なのです。


4. フランスでの取り組み

さてインターネット時代到来におけるフランスの取り組みには、いろいろと教訓に満ちた
ものがあります。フランスは文化を大切にするお国柄です。そのフランスが「現代は文明
が危機に瀕している時代である
」といっているのです。それは現代が「記憶喪失の時代
の様を呈しているからです。ひとつの事件も2,3日しか扱われません。大きな事件も次
の大きな事件の勃発とともに霧のように記憶からかき消されてしまいます。これは「文明
の危機
」であるというのです。文明は「歴史をもつ共同体」によって支えられています。
文化は「記憶を共有する」ことにおいて成り立っています。このような記憶の危機を克服
するひとつの有効な手段として、インターネットを活用しようとしているのです。フラン
スには大量の映像文化が蓄積されています。たとえば戦争の記録をインターネット上に掲
載し、それらは年、場所、事件などで分類され、どの情報でも瞬時にそのファイルを開く
ことができるように取り組んでいます。過去における苦難から学んだ教訓、価値観などを
共有しつづける
ことにおいてフランス国民であろうとしているのです。


5. JECの百科事典

私はこれらのことの中にJECが学ぶべきひとつの霊的教訓があるのではないかと思い
ます。申命記は旧世代の荒野における死の後、約束の地に入る直前の新しい世代に「神の
御心と民の霊的経験
」が復唱されたものです。士師記は「主がイスラエルのためになされ
たわざを知らないほかの世代が起こった
」と記され注意が喚起されています。第一世代の
宣教師の先生方が次々と天に凱旋され、日本人の第一世代の教職者の先生方もいい年齢と
なられてきました。先生方の存命中に後世のJECの教職者とメンバーが共有すべき「
期からの記憶(ルーツ)
」を、継承すべき「霊的遺産(アイデンティティ)」を、そして「
ECの申命記
」のようなものをインターネット上に、JECのホームページ内に書き綴っ
ていただく必要があるのではないでしょうか。また、枝教会としての個々の教会の情報の
ページも、ひとつのからだの種々の機能としての専門委員会の情報のページ、そして将来
のビジョンの展望などのページなどもいろんな先生方や諸兄姉に書き綴っていただけたら
と思います。このホームページをのぞけばJECのすべてが分かるという「JECの百科
事典
」のようなものになればと思うのです。


6. ほぼ一秒で地球を一周

またインターネットによるコミュニケーションは「地球」という空間の概念を大きく変え
ているのです。これまでも航空機や国際電話などの手段が、地球の大きさについての人間
の感覚をいちじるしく変えてきましたが、インターネットは、いっそう地球を「狭く」感
じさせるでしょう。インターネットの上でデジタル・データはほぼ一秒で地球を一周する
ことができ、双方向で、文字や音声や画像が大量に高速に交換できるのです。インターネ
ットによって、人間は新しい感覚をもって地球の上で生きていくようになり、その意味で
はインターネットは、地球全体を取り巻く新しい空気のようなものになっていくのかもし
れません。費用は、パソコン本体(約10万円)、インターネット接続料金(2000円
/月)そして電話代(市内通話料か隣接市外料金)で世界中どこのコンピューターとも接
続できます。今後JECに形成されていくであろうインターネット網は、九州から関東ま
で、そして海外宣教地のインドネシア・カリマンタンにまで展開した働きと交わりを取り
巻く新しい御霊の酸素となりえないでしょうか。


7. 情報スーパーハイウェイ

アメリカにおいては、ゴア副大統領が「情報スーパーハイウェイ構想」を明らかにしま
した。ゴア副大統領の父親はアメリカの高速道路網の働きをされた方で、それにちなんで
インターネット情報網を全米にはりめぐらす計画を提言したのです。今、私にはひとつの
夢があります。それは「JECのすべての教会とすべてのチャペルのフロアーにインター
ネット・パソコンが備え付けられ、すべてのメンバーが必要なときに『JECのホームペ
ージ』を見ることができるようになる
」という夢です。そのときにはたとえば、「インタ
ーアクトの最新の情報を僻地の教会の受洗したばかりの兄姉が見聞きし、重荷をもって祈
ることができる
」というようなことが可能になるのです。空間距離を越えたJECの兄姉
たちの交わりに有効(結婚相手を見つけるのにも有効)なだけではなく、スウェーデン語
版のバイリンガルなページなどをつくれば、北欧のメンバーとJECのメンバーとの草の
根の交流(特にユースなどに期待)なども実現するかもしれません。


8. 意志決定のプロセスの変化

また企業における意志決定にも大きな変化が起こりつつあります。たとえば一つの提案
ある。もちろん議長がいて、その提案に関しての審議を開始する旨、メンバー全員にメー
リング・リストなどでメールを送る。そして電子メールで一定期間、意見交換 −すべて
の人がお互いに見られるようにするのが普通です。− が行われたとなると、次に意志決
定のフェーズ(段階)
に入ります。このフェーズに入ったら、一定期間のうちに反対か、
賛成かを表明
する。意思表明のなかった人は、たとえば「賛成」とみなす。このような形
で進めます。おもしろいことに「大事な意思決定は集まってするミーティングでしてはい
けない
」とする組織が増えているそうです。インターネットは空間距離を越えるので、J
ECの理事会、牧師会、各専門委員会などの相談会もJECの地理的拡大にともなって、
会議におけるインターネット活用を考慮すべき時期がくると思います。24時間いつでも
会議参加できるインターネットは、多忙な生活の中で家庭サービスも犠牲にして、教会の
役員会や各委員会の出席に苦労されている兄姉にも朗報だと思います。使い方はインター
ネット・パソコンの通信の設定をちゃんとしてもらって、使い方の手順を教えてもらえば、
もう十分使いこなせます。子供のファミコンに比べれば、無茶苦茶簡単です。たぶん「
んなに簡単ならもっと早く手がけていたら良かった。
」とみなさんおっしゃると思います。


9. 自分の望む視点で

オリンピックに関していえば、リレハンメル冬季オリンピックのときから、全競技・全
選手の記録をインターネット上で流した
のです。すると、毎日何万人もの人々からのアク
セスがあって、関係者はたいへん驚きました。いままでのマスメディアとは全く違うオリ
ンピックを、提供できたのです。たとえば、これまでのテレビ中継ならば、入賞者、成績
のよい人しかみられなかった。自分の見たい選手の成績があまりよくない場合はほとんど、
見ることも記録を知ることもできませんでした。それがインターネットなら、自分の望む
視点で見ていくことができる
わけです。自分の国の選手を見たいなら、たとえ何十位でも、
しかも24時間、自分が好きなときに見ることができます。こうしてインターネットによ
って、それまでとは全然違うオリンピックの鑑賞が可能になったのです。JECニュース
においても限られた紙面での限界があります。しかしホームページの場合はその情報量は
ある意味で「無限の容量」が可能です。谷間に咲く小さなすみれのような証しでさえも、
ホームページには歓迎されるのです。あなたの証しを文書委員会/ホームページ作成担当
宛にお送りください。


10. 少数者対象の時代

テレビと比較すると、これまでテレビの目標は10%の視聴率で1000万人がみてく
れるなら採算がとれていました。しかしインターネットの時代は、簡単な機器で安価な費
用で制作できるので、1万人でも10人でも1人でもよいのです。インターネットの時代
は少数者を対象にした時代です。消えていた価値をよみがえらせた時代なのです。JEC
に流れる「十字架と聖霊」による価値観をその証し集をホームページを通して、全世界に
向けて(またある意味で)少数者に対して提供しつづけていくことができたらと思います。