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3.日本宗教の原質と形式

c.儒教と天皇制

11/07/19



    日本宗教の〈形式〉ー天皇制と深い関わり

1. 儒教の渡来

ア)儒教ー人間関係、道徳・政治についての教え than 宗教

イ)〈原質〉としての宗教意識を包摂→「内なる天皇制」=日本的心性に独特の集団同調主義を形成

ウ)儒教−道教、陰陽道等ともに五世紀半ばに渡来

エ)『古事記』−285年に百済王より『論語』十巻、『千字文』一巻が献上

オ)儒教の祖:孔子の言行録『論語』と習字の手本『千字文』とともに伝来

カ)文字の学習=儒教的教養を身につける

キ)先進国中国のもつ文化の世界に目が開かれる

2. 原始儒教の目的

ア)中国−孔子、孟子の原始儒教の目的−封建諸候の政務担当する君子の養成

イ)漢代以降の国家儒教−皇帝の下で政治を運営する官僚の養成

ウ)官僚を選抜する国家試験の制度

エ)国家儒教の具体的表現−律令制度(隋を経て唐の時代に完成)

3.律令制度の導入と〈形式〉の確立

ア)聖徳太子、遣隋使・遣唐使とその派遣者→国家儒教の側面

イ)氏姓制度の社会→律令制度の導入→天皇による中央集権制(古代国家の形式)

ウ)聖徳太子−十七条の憲法・604・「和を以って貴しと為し」

エ)憲法全体のことば、思想←『論語』、『孟子』、『礼記』等(儒教の教典)

オ)大宝律令・701・

カ)学令−大学寮等の設置が規定

キ)教育内容−儒教経典の学

ク)目的−天皇の官僚にふさわしい人材育成

ケ)現代政治の中枢に生きている伝統

コ)昭和天皇の死去直後−元号「平成」

サ)「地平らかに天成る」という『書経』(儒教経典のひとつ)

シ)not only 〈形式〉の整理 but also 宗教統制の役所の設置(神祇官)

ス)中国の律令制度−太政官のみ、日本−太政官+神祇官(明治維新で復活)

セ)律令神道

−日本の〈原質〉=地方の神々

→天皇家中心の貴族・官僚の支配層の祖先神により統率

→国家体制の中で〈形式〉として秩序づけ

4. 民衆の御霊信仰

ア)〈形式〉は〈原質〉を包み込む−しかし不安定

イ)民衆−みずからの生に密着した安心を求める

ウ)やがて〈原質〉からの反動

エ)〈形式〉と〈原質〉=宗教的弁証法をなす

オ)反動−民衆レベルにおける御霊信仰の流行

カ)御霊信仰−恨みをもって死んだ人の霊を慰める(律令国家成立以前から)

キ)儒教イデオロギーによる律令制度導入後→加速

ク)神祇官の下に→地方の神々まで組織化、僧尼令による仏教統制 →民衆に対する宗教的・思想的しめつけ

ケ)律令体制→古代村落の解体→自然的災害の増幅

コ)政治的敗戦者の御霊=疫病、飢饉の直接的原因

サ)華やかな歌舞−御霊を慰撫、神前読経−疫神と化した御霊を成仏

シ)民衆的宗教運動の広まり

→儒教イデオロギーで武装した律令支配階級揺るがす→政府自身が御霊会主催

ス)御霊会(政府主催)−崇道天皇以下六人の王臣の怨霊−慰撫・遷却・863・ - (民衆)−菅原道真(太宰府に左遷)死後−御霊会・10世紀・

セ)国家からの〈形式〉の押しつけ→〈原質〉の激しい反発 - 明治の国家神道への反発→民衆よりの新宗教の成立

5. 儒教の日本化

ア)儒教の経典−文字の学習、物の見方・考え方の基本的訓練

イ)儒教の影響−人間関係、道徳の形成(江戸時代に顕著)

ウ)近代日本人の道徳、倫理観のもと

エ)朱子学(中国−宋の時代)−江戸幕府に好まれる - not 壮大な形而上学 but 実践的な倫理として

オ)徳治主義

a.修身−威儀を正し、言行を慎重にする
b.斉家−家族を調整し、家政を適切に処理する
c.治国−一国の国政に当たる
d.平天下−天下を泰平にする

カ)「修身→斉家→治国→平天下」−個人道徳から国家の政治目標までの「連続」スローガン

キ)儒教徳目 -

-五倫−父子有親、君臣友義、夫婦有別、長幼有序、朋友有信
-五常−仁、義、礼、智、信

ク)忠義と孝行(最もアピールした徳目)

-忠義−君臣関係を規制する義(正しさ)に対して忠実であれ -/日本→君主そのものに忠実であれ

-孝行−人間の生命は天(自然)による父子の結合が基本-/日本→単に親孝行せよ(矮小化)

ケ)親子関係と君臣関係の混同−疑似家族的な性格

−親子の情の関係→親分−子分、親方−子方、オオヤ−タナコ(肉親を越えた文脈に適用)
−さらに伝統的な「共同体」のタテの関係へ(無制限に拡大)
−封建時代の藩、商人の家、村落社会、明治期の大日本帝国、資本主義的諸企業、官僚システム、戦中の天皇中心の一大家族国家観

コ)共同体の各部分−それぞれに固有の領域主権(キリスト教の考え方)破壊

サ)将軍と天皇の関係−日本的儒教理論で説明

−中国の儒教「天命受託」「易姓革命」−天(超越的性格)、王(天の命を受けて立派な政治)−そうでない王は取り替えてもよい(革命)

−新井白石・1657-1725・の解釈 - 日本での変質(「天」の超越性を骨抜き) - 徳川幕府の将軍−「天子」=「天皇」の命を受けて征夷大将軍となり王道政治を行なう

シ)山崎闇斎・1618-1682・−朱子学者→垂加神道−「天」の超越性を保ったが、日本神話のアマテラスの神勅、天孫降臨と結ぶ - 「天」を現実の天皇と結びつける混同

ス)王道政治−not 徳治主義の君子 but 万世一系の血統主義

セ)水戸学の流れ(幕末期)−尊皇攘夷論、国体思想

−儒教の「忠孝」の徳目内包の国体思想→明治期「帝国憲法」「教育勅語」
−近代日本人の精神形成に多大な影響

ソ)教育勅語全文−日本的な〈形式〉としての儒教倫理