ICI ホームページ表紙 宗教の神学  宗教を求める動物 宗教理解の歴史 創造の回復か神格化 自然宗教−原質 国家宗教−形式 霊魂循環と祖先崇拝 仏教とアニミズム 儒教と天皇制 神道とは何か 平田神道と国家神道 国家神道

@ 「神道」の語源

A 神道の五領域

B 古代の生活様式と神話

C 宮中祭祀

D 神道のカミ概念

E 神道のツミ概念

F 神道の世界像

序.…神道とは

・「神道」…大変幅広い意味
・多種多様な性格…民間神道〜国家神道〜皇室神道
神道とは…今までの基本的概念である<原質>と<形式>の両方を含むことば

1. 「神道」の語源

『日本書記』・・仏教との対比ー外来の高度な宗教により自らのアイデンティティに目覚めた

2. 神道の五領域

@民間神道…各地の民俗として行われているイエやムラの祭り、原型は採集狩猟生活の縄文時代の生産儀礼

A神社神道…宗教施設としての各地の神社中心に営まれる宗教、大部分は、弥生時代以降の農耕儀礼が発達した祭り、祭神の多くは土着の氏神、産土神、鎮守神など、おおきな神社は神社本庁の下に。

B皇室神道…天皇家を中心とした宗教、古代王権国家成立時に、地方豪族の神祭祀をも包摂し、記紀神話の神々の体系(パンテオン)を構成、国家的性格をもたせた宮中祭祀。

C学派神道…神道における理論化の試み、各時代に仏教や儒教やキリスト教の影響を受け種々のタイプの神道家を輩出。

D教派神道…幕末、明治維新期に誕生した創唱宗教や山岳信仰などを国家神道下で再編したものの総称

3. 古代の生活様式と神話…「古事記」「日本書紀」の中に

@採集狩猟生活の反映…ホヲリノミコト(山幸彦)、ホデリノミコト(海幸彦)の話

A稲作農耕生活の反映…スサノヲノミコトが高天原のアマテラスに会いにきて、田のあぜを切りはなって水を干すなどの悪業

B農業の開始の神話的描写…地上に降りたスサノヲはオオゲツヒメという食べ物の神のところへ行き、食べ物を求める。オオゲツヒメは食べ物を口から吐き出し、また鼻の穴やお尻の穴からも出す。女神が身体から排泄物のように食べ物を出すのをみたスサノヲは、汚いものを食べさせられると思い、憤慨してオオゲツヒメを殺してしまう。その後、この女神の死体の頭からはカイコが、両目からは稲が、両耳からは栗が、鼻からは小豆が、陰部からは麦が、お尻からは大豆が発生した。そこで高天原にいるカミムスビ(神皇産霊)というカミがこれを見て、それらのものを取ってこさせ、種にする。人間の農業はここから始まったと、神話は述べる。

C人間世界の支配の関係の反映としての神話…大和朝廷が全国を統一していく過程で、地方の土着の神々や豪族の祖先神などを包摂しつつ、支配権を確立していった

D国津神(土地の主、生産者の機能)と天津神(政治、祭祀、軍事の機能)…とを記紀神話の中に、神々の体系(パンテオン)として分類していった

E律令国家の政治制度…太政官以外に神祇官という宗教統制の官職→天神地祇の祭りを統括(律令神道)

4. 宮中祭祀

@神道…朝廷・民衆の世界−仏教と習合が普通、明治維新期の神仏分離の政策−仏教色を排除した神道一色の宮中祭祀の始まり

A1989年2月24日昭和天皇の葬儀「大喪の礼」−神道式の儀礼、天皇家の宗教−古代から変わらず「神道」と錯覚、仏教に熱心な天皇・葬儀もほとんどが仏教式

B現在の天皇…宮中三殿を中心に一年中、神道祭祀に明け暮れ

C宮中三殿とは…明治になってできた宮中内の神社−1.アマテラス(天照大神)を祀る賢所、2.歴代天皇の祖霊を祀る皇霊殿、3.天神地祇八百万神々を祀る神殿

D祭祀…大祭と小祭−1.大祭には、元始祭(一月三日)、紀元節祭(二月十一日)、新嘗祭(十一月二十三日)など、十三の祭祀。天皇みずから神主として祭りを執り行う。
      天皇即位の直後の新嘗祭を「大嘗祭」、天皇一世一代の大祭

E「天皇とはどういう人か?」…宗教的な面−「一年中、神道の祭りをやっている神主さん」、「天皇=日本国の象徴」−近代化された物事の表層のみの理解

5. 神道のカミ概念

@神社神道…自然発生的な民族宗教、キリスト教のような「正典」「神学」存在せず、「古事記」「日本書記」「延喜式」等の神道古典が「神典」→カミ概念・ツミ概念、儀礼方式等の抽出

A土着のカミ概念…漢字の「神」「祇」「神祇」等の使用、中国の「神」−超越的な意味、日本のカミ−超越性の欠如

B江戸時代半ば以降の国学の発達−「カミ」の語義研究…主要な説のみでも十指に余る

C広く普及した説…「カミ」は「かみ」(上)とする説あり−今日の国語学の発達により、古代語で「カミ」の古形は「カム」、カミと上とは「ミ」の子音が異なる

D本居宣長…「カミ」の音からその意義を推量する方法ではなく、古典の実例から調べる方法→「可畏いもの」=カミ

6. 神道のツミ概念

@ツミの概念…カミ概念と同様、あまり明確でない

A「古事記伝」巻三十…「すべてツミは…諸々の悪しきことをいう。そは必ずしも悪行のみをいうにあらず。穢れまたわざわいなど、心となるにはあらで、おのずからにある事につても、すべていとひにくむべき凶事をば、みなツミというなり。」

B天津罪・国津罪…天津神・国津神に対応して教えられている、キリスト教の罪とは違い「安定した宇宙(コスモス)を破壊する」の意味しかない、「日本的宇宙論(コスモス)の破壊」=罪、罪は「お祓い」によって消し去りうる、深刻さの欠如、イザナキが「黄泉の国」から逃げ帰り、その死穢を浄めるための「禊祓(みそぎはらえ)」をした、罪穢の禊祓=神道祭祀の中心

7. 神道の世界像

@「世界像」−世界をどうとらえているか?…天津神のいる高天原、日本国土としての葦原中津国、死者の行くところとされる地下の黄泉の国(または海のかなたの常世の国)−古代諸神話共通の三層の概念、救済の教義は存在せず

A低いレベルの神道教義→「学派神道」…仏教・儒教・キリスト教の高度な形而上学を借りて、神道を理論化する数多くの試みが生起