ICI ホームページ表紙 宗教の神学 序 宗教を求める動物 宗教理解の歴史 創造の回復か神格化 自然宗教−原質 国家宗教−形式 霊魂循環と祖先崇拝 仏教とアニミズム 儒教と天皇制 神道とは何か 平田神道と国家神道 国家神道
b.平田神道と国家神道
11/07/19
様々な神道の登場
鎌倉時代:伊勢神道
内宮の祭神…天照大神
外宮の祭神…豊受大神
外宮の神職の家柄の渡会氏が唱導
『日本書記』…「混沌」を万物の根元のカミ
諸神、諸仏、人間…このカミに帰着
仏教とは別に−神道の主体性
室町時代:吉田神道
吉田(ト部)兼倶(1435-1511)により大成
虚無太元尊神(日本書記の国常立尊と同じカミ)=宇宙の根本神格
森羅万象はこのカミに起因
世にあるすべての道(法則、規範)−この根本神格からの派生
枝葉(儒教)、花や実(仏教)、幹や根(神道)
江戸時代−幕府の命により、仏教の支配外の神社の大半を支配
江戸時代
前期:
吉川神道 :吉川惟足(1616-1694)
垂加神道:山崎かん斎
後期:
本居宣長 :仏教や儒教と習合した諸神道諸説を批判
「古典にあらわれた神道の精神に復古すべき」と主張
皇室の祖先神としてのアマテラス、とその子孫としての天皇崇拝
平田神道:平田篤胤
宣長の継承者:平田篤胤(1776-1843)の神道−キリスト教の強い影響
禁書のキリスト教書−中国からひそかに入手し、彼の思想に取り入れた
『本教外編』(上・下)←カトリック宣教師からの盗作
上巻:M.リッチ著『き人十篇』の意訳、G.アレニ著『三山論学紀』の改訳
下巻:D.パントーハ著『七克』の翻訳
全能の創造神、三位一体、原罪、死後審判等のキリスト教教理が紹介
世の悪…責任を人間に帰している
宣長…「禍津日神」というカミに帰している
比較すると、一歩前進
平田篤胤著『霊の真柱』、『古史伝』…キリスト教教理をさらに深く神道理論と関係づけ
主宰神としての天之御中主神の登場
死後審判の思想の出現
宇宙支配の構造
天之御中主神…宇宙すべてを支配する主宰神
『古事記』の冒頭部分−「高天原」→「天御虚空」と改ざん
天之御中主神、高皇産霊神、神皇産霊神…三位一体になぞられている
創造神としての「アメノミナカヌシ」の登場…神道で不明確であった宇宙全体の支配構造の明確化
大国主神の地位の向上…天孫降臨以前は国土を支配、天皇の祖神に譲り、幽世(死んだ人間が行く世界)に行き、死後の人間の審判を行う役割
審判の基準が問題…顕世において「産霊大神の命賜へる性」に背くか否か=この世で天皇の支配への服従があるかどうかに帰着
男神アダムと女神エバの話…日本からの輸出としている
きわめて偏狭な皇国中心主義を露呈
平田篤胤の思想…神道を肉付けするためにキリスト教から盗みとりしたにすぎない
しかし、篤胤の死後…平田派復古神道の尊皇主義を信奉する者が多数−諸藩の下級武士、神職、地主、在郷商人等、門人は千人以上
国家神道の成立
幕末の尊王攘夷→尊王開国、近代への道
古代の律令国家の神祇官の復活→神々の国家統制
国家による宗教統制−地方の神社の神々や土着の新興宗教にまで
日本古代の宗教的弁証法−<形式>が民衆の宗教意識<原質>を包み込もうとする圧力
国家神道下の神社政策:典型例
神田明神…江戸時代、日枝山王の祭りと並び、天下祭りと呼ばれ、一年おきに交代でそのみこしが江戸城内に入る特権
創建は、聖武天皇のころ(730年)、祭神は大己尊命
その後、平将門を合祀(1309年)
江戸時代−百余か町の商人・職人の氏子を得て繁栄
しかし、明治維新以降−政府から勅祭社に准ぜられ、将門の霊は別殿に移設
平将門…平安時代、東国八カ国を平定(935年)
自ら「新皇」と称し、朝廷への反逆を企て、敗れ去った人
将門の霊を祀る…民衆の側から「一種の御霊信仰」
きびしい権力支配という形式に対する<原質>からの反動
明治の王政復古…天皇の権威
<形式>からの再反動
“国賊”の霊をカミとして祀ることを禁止
再び、強力な<形式>の支配が到来
明治維新とともに−日本各地の神社に国家の統合の手
こうして「国家神道」が成立していく
太平洋戦争終結までの約80年間…近代日本人の心は深くクニと天皇に縛られることになった
国家神道の特徴
明治政府によって創出された〈形式〉宗教
明治維新から帝国憲法発布までの二十年くらいの間に造られた
内容は古くからの神社神道と皇室神道が結びついたもの
天皇とその氏神の伊勢神宮を頂点とした
仏教の徹底的排除によって成立した