序
○宗教の中心・根底=「神観」「神の教理」
神を−How to "経験、認識、表現"−その宗教の全体を決定づける
聖書−「初めに神・・・」創世記1・1−not 神存在証明
but 神存在を前提して
「すべてのことが、神から発し、神によって成り、神に至る」ロマ11・36−壮大な神中心の世界観
「神観」−信仰全体を決定づけ、生活全体を方向づける
日本在来の神観
の問題「カミ」−すべて上なるもの、尊いもの、恐るべきものをみな「カミ」といった
日本人の神々−すべて人間的・相対的な存在
日本人の精神構造
「究極的なもの」「絶対的なもの」の意識がない
創造者と被造物との明確な区別、聖なるものと俗なるものの断絶−欠如
有限世界の一部−容易に神格化
罪悪問題−not 絶対者の前における罪 but
儀式的な不浄の観念
無神論的風潮
の問題−実際的無神論(詩篇14篇)の問題唯物論、実証主義、無神論的実存主義
世俗化の問題−「神なくしてすべてのことができる」といった生活感覚
ニヒリズム−存在の無意味の主張
「神がいなければすべてのことが許されている」
(ドストエフスキー)価値観・道徳の崩壊
人格性の喪失
刹那主義−「現在を楽しめ」
権力への意志−「力は正義なり」の正当化
「知られない神」
の問題−リベラル派教会に広がりつつある(使徒17・23)「今日たとい神がおられるにしても、もはや神がいかなる方であるかを知ることができない」−不確かさの風潮
キリスト者ひとりひとり
の問題ジェームズ・フィリップス−英国クリスチャンの神観の現状「あなたの神は小さすぎる」
「人間の良心」
偉大な老人
特定の教派の神
生命力と色彩に乏しい青白きガリラヤ人
○聖書の神とその特質(神の本質と属性)の探求の進め方
有限にして罪ある人間−超越して絶対的な主権の神=「主体」
not 人間の側からの「主観的な規定・説明」 but
神の側からの「語りかけ」「啓示」
聖書の証言・告知に従って
−神の根本的特質最も純粋な霊
(ウエストミンスター信仰告白4・24)「神は霊です」
ヨハネ4・24、(霊的存在としての神/出33・20,詩篇139・1以下、Tテモテ1・17)誤った宗教的伝統の中のサマリヤの女−正しい神礼拝のあり方
聖書の神の根本的特質
ギリシャ語原文「霊」に強調−冠詞を伴っていない−「最も純粋な意味での霊」
神は非物質的存在、形なく、目に見えない方
神は近づくことのできない光の中に住まわれ、人間がだれひとり見たことのない、また見ることのできない方である(ヨハネ1・18、ロマ1・20、Tテモテ6・16)
神の「霊性」の強調−神を事物・場所に限定する偶像礼拝・自然礼拝に対する拒否の宣言
神の「御手」「腕」(申命記4・34)、「耳」(イザヤ37・17)−神の人格的活動を浮き彫りにするための修辞上の神人同形論・擬人法
「主を見た」(イザヤ6・1)−神の栄光の輝きに圧倒された霊的高揚の経験
神は生きておられる
「生ける神」という表現−神の現臨により確実な救出(ヨシュア3・10以下)
「生けるまことの神」(Tテサロニケ1・9)−偶像との区別(使徒14・15、17・22-31)
notonly 存在 butalso
生きて働いておられる−共通の確信・経験
「いのち」を所有- not 他者依存的・変化しやすい被造物(マタイ6・25-33)
but 自己充足・独立自存の方(使徒6・25-33)
神は人格的存在
人格的存在−自意識、意志、感情、意志決定、「我と汝」の呼応・相関関係を持ちうる個としての存在
神名−「わたしはある」(ヤハウエ、すなわち主)出3・14−not
抽象的な存在、無名の霊力 but 民と結んだ契約に対する神の変わることのない忠実さを意味する名
not 名称、表記上の記号 but 人の性格、特徴のすべて(ヨハネ17・6)、神の本性と属性(詩篇9・10)
「神名は神御自身である」(カロフ)−多様な神名は神の人格的特質の諸相
人と生命の通い合った「我と汝」の豊かな関係(出3・7、詩篇94・9、103・8-13)
無限
神は空間に縛られない方
神は空間をつくられた方−空間によって限定・制限されず(使徒17・24-25)
notonly 遠くにいる神、「超越の神」 butalso
近くにいる神、「内在の神」
神の遍在性(エレミヤ23・23-24、使徒17・27-28、詩篇139・27-28、マタイ28・19-20、使徒1・8)
神は時間に縛られない方
古代近東の諸宗教−世界出現以前の出来事の叙述に関心−神々の誕生とその系図
旧約−「主は永遠の神」(イザヤ40・28、詩篇90・2、イザヤ44・6、黙示録1・8,21・6,22・13)
神は時間の創始者−時間に服さず、全過程を支配「高い塔からパレードの全体を一望」(詩篇90・4)
知識および知恵
との関連における無限性神の全知性−神は御自身および他のいっさいの事柄(それが現実のことであれ、単に可能性内のことであれ、また過去、現在、未来を問わずもすべての事柄を完全に、永遠の初めから知っておられる)(Tヨハネ1・5、ローマ11・33、詩篇147・5)
同時的に、余すところなく、正確に知っておられる(ヘブル4・13)
御自身の計画の達成において、最善の道、最適の方法を知っておられる(マタイ10・29,30)
神の全能性(創世記17・1、エレミヤ32・17)
自然界に対する支配力
世界の創造との関連(詩篇96,104篇)
奇跡
との関連(U列王記6・5-7、マタイ14・22-33、マルコ4・35-41)歴史に対する神の主権と支配
not 偶然・カオス(混沌)の世界 but 神は悪をも支配(使徒17・26、ダニエル4・32、創世記50・20)
人間を作り変える神の力
not 恣意 but 不断の善意志完遂の能力(マタイ19・26、詩篇115・3)
不変
(詩篇102・26-27、ヤコブ1・17、ヘブル13・8、マラキ3・6、出3・14)量的な意味
で変化がない神は完全な方−増加・減少・喪失はありえない
質的な面
で変化がない本性において修正・成長はない−神の思想・計画・行為は不変の本性に依拠しているので事情により左右・変化せず(民数記23・19、創世記12章以下)
ギリシャの神々−人間のことに無関心・絶縁・平静・冷淡・不動・孤立した存在(非活動性)
聖書の神−活動性(哀歌3・22-23)
聖なる方
セム系諸民族の神経験−「聖」(レビ11・44-45、ヨシュア24・19、Tサムエル6・20、詩篇22・3、イザヤ40・25、エゼキエル39・7、ハバクク1・12)
新約における神の「聖性」−(ヨハネ17・11、ヘブル2・10、Tペテロ1・15-16、黙示録4・8)
神の超越性
神の超越的尊厳性−出15・11、Tサムエル2・2、イザヤ40・25、ホセア11・9.黙示録16・5
神の倫理性
神−一切の道徳的悪・罪から完全に離れている方、憎む方(ハバクク1・13、ヤコブ1・13、レビ19・2)
信仰者
恐れかしこみつつ聖なる神に接近(ヘブル12・28-29)
その生涯を通して神の聖性を基準・目標に聖化の道へ(Uコリント6・14-7・1、エペソ5・27、Tテサロニケ3・13,4・7)
正しい方(義)
「正しい」「義」−旧新約に繰り返し(エズラ9・15、詩篇119・137、ヨハネ17・25、ネヘミヤ9・8、詩篇145・17、エレミヤ12・1、哀歌1・18、ダニエル9・14、Uテモテ4・8、Tヨハネ2・29、3・7、黙示録16・5)
「正しい」「義」−(ヘ:ツァッディーク、ツェデク、ツェダーカー)(ギ:ディカイオス、ディカイオシュネー)法的な要素をもつことば、標準に合致する、法にかなう、真っ直ぐである
神の律法は御自身の本性を表現した完全なもの(詩篇19・7-8)
神は正しい律法に従って行動される方(創世記18・25、エレミヤ9・24)
神はその律法を人間に課し、それに基づいて裁かれる
正しい審判者(Uテモテ4・8)
報酬的正義
(申命記7・9、詩篇58・11)報復的正義
(創世記2・17、ローマ6・23、Uテサロニケ1・8)信仰者への正義実践の要求(アモス5・15,24、ヤコブ2・9)
真実な方
神はまことの神である
偶像の虚無性(エレミヤ10・3-5、詩篇97・7、イザヤ19・1ハバクク2・18、T列王記15・12、Tコリント8・4)
神の独一性"unitas singularitatis"(エレミヤ10・10、ヨハネ17・3、Tテサロニケ1・9、Tヨハネ5・20、黙示録3・7、6・10)
神は真実を語る方である
神は人間ではなく偽りをいうことがない(Tサムエル15・29、テトス1・2、ヘブル6・18、ヨハネ17・17)
神は忠実な方である
事を忠実に成し遂げられる方(民数記23・19、Tテサロニケ5・24、詩篇89・33-34)
イスラエルの全歴史−神の真実の証言史
魂をお任せしなさい(Tペテロ4・19)
愛
神は愛である(Tヨハネ4・8、16、Uコリント13・11)
「御自身を永遠に分かち与え続けること」(his
eternal giving or sharing of himself)
父・子・聖霊なる三位一体の神−永遠から愛の交わりのうちに存在(ヨハネ3・35、17・24)
御子イエス・キリストを通して決定的な形で人間に(ヨハネ3・16、Tヨハネ3・1)
「・・・にもかかわらず」の愛である(申命記7・7-8)
人間の愛「・・・ゆえに」の愛−対象の価値、動機をもった愛
神の愛「・・・にもかかわらず」の愛−泉のように吹き出し、あふれゆく愛(ルター)
「反逆者や敵さえも」愛する愛である(ローマ5・6-10、マタイ5・44、出34・6、エペソ1・5-8、詩篇103・13、マタイ14・14)