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福音派の定義
世界福音主義同盟の歴史的背景
11/07/19
前回は私たち福音派(カリスマ派を含む)の「聖書観」を紹介させていただきました。その要点は、聖書が神のことばであることの論証は、「聖書自身が提示している聖書観」に基づくべきこと、つまり、それは「聖書の自己証言の立場」に立つことでありました。
T.福音派の定義
福音派の品質証明の主たるものは、はっきりと聖書に立つことです。福音派と申しましたが、その範囲についての定義はさまざまであります。ときどきカリスマ派と福音派といった具合に狭い意味で対置する場合が見受けられますが、これは「福音派」の真の定義を見失わせる危険があります。今日の現象のみに目を配るのではなく、歴史的かつ神学的に掘り下げて検討することが肝心です。
宇田師は「福音派とは、1846年に結成をみた福音主義同盟の9項からなる信仰基準と、1974年の世界伝道会議がだした『ローザンヌ誓約』の中に表明されている聖書的信仰と宣教観を信奉する、聖霊派から改革派までのキリスト教共同体、あるいは連合体を指す。」と簡潔に表現されています。
U.福音主義同盟の歴史的背景
福音主義同盟の歴史的背景について申しますと、16世紀に宗教改革があり、その神学を体系的かつ緻密に整理した17世紀の正統主義の時代があります。そして18世紀には「理性に障害となるキリスト教の超理性的要素をすべて排除していく」啓蒙思潮に根ざした自由主義神学の時代が到来します。この自由主義神学が隆盛をきわめようとしていた時期に起ったのが1846年にロンドンで結成されたのが福音主義同盟でした。
当時、ヨーロッパのキリスト教界は自由主義の問題の大きさを感じ始めていました。こうした状況の中で、聖書的信仰に基づく国際的一致と協力の必要を強く感じていた世界の50教派から800人の代表が参集したのでした。
V.9項目の福音主義信仰表明
そして次のような9項目よりなる福音主義信仰を確認し、それを全教会に向かって表明しました。
@聖書の神的霊感および神的権威、聖書の充分性
A聖書解釈における個人的判断の権利および義務
B三位一体の神
Cアダムの堕落の結果としての人間の全的堕落
D神のひとり子の受肉、人類の罪のための彼の贖いのわざ、彼の仲保的とりなしと支配
E信仰のみによる罪人の義認
F罪人の回心および聖化における聖霊の働き
G霊魂の不滅、肉体の復活、正しい者の永遠の祝福と悪い者の永遠の刑罰を伴う、主イエス・キリストによる世界の審判
Hキリスト教伝道者職の神的制定、洗礼と聖餐の二礼典の義務とその永続性
その内容は@Aは啓示論・聖書論、B神論、C人間論・罪論、Dキリスト論・贖罪論、E義認論、F聖化論、G終末論、H教会論についての聖書的骨格の表明です。 福音派がこのような定義と内容を宿すものであるとするならば、私たちは明白に福音派の一員であり、福音主義的体質を宿すものです。私はこのような自己理解がこれからの開拓・教会形成・世界宣教における教派を越えた協力において大切な要素と思うのです。
ローザンヌ誓約については次回にふれたいと思います。
1.宇田進「福音派はどうなるか」いのちのことば2
2.宇田進「福音主義キリスト教と福音派」
(抜粋・編集)