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ローザンヌ誓約
歴史的・神学的背景
11/07/19
前回は私たち福音派(カリスマ派を含む)の真の定義ー「福音派とは、一八四六年に結成をみた福音主義同盟の九項からなる信仰基準と、一九七四年の世界伝道会議でだされた『ローザンヌ誓約』の中に表明されている聖書的信仰と宣教観を信奉する、聖霊派から改革派までのキリスト教共同体、あるいは連合体を指す。」を紹介させていただきました。そしてその前半部分の説明をさせていただきました。今回は後半部分「ローザンヌ誓約」の歴史的・神学的背景の説明をさせていただきます。
T.歴史的背景
まずローザンヌ会議の歴史的背景に目を留めますと、初代教会以降、地中海世界で広まったキリスト教は、ローマ帝国において東西に分かれ、ギリシャ正教とローマ・カトリックに分かれました。そしてさらに歴史は流れ、宗教改革においてヨーロッパ世界はカトリックとプロテスタントに分かれました。そしてさらにプロテスタントは種々の教派に分かれていきました。そのような中において教派間の敵意、偏見、誤解、闘争が継続していきました。
教派間の闘争がいかに神の御旨に反するものであるかを痛感しましたのは、十九世紀において最高潮に達した海外宣教運動に参加した宣教師たちでありました。十九世紀の世界宣教の進展の中で欧米諸国の海外宣教団体が協力して海外伝道をはかろうと世界宣教会議が開かれました。ロンドン(一八八0)で始まり、ニューヨーク(一九00)エジンバラ(一九一0)と続きました。
U.分岐点−エジンバラ会議
しかし、一九一0年に開かれたエジンバラ会議を分岐点として、エキュメニカル派と福音派の対極化が生じてしまいました。それはエキュメニカル派が次の四つの点で宣教運動を非聖書的な方向に向けてしまったからでした。@福音のメッセージの権威を喪失させたこと、A主たる関心とエネルギーをこの世の社会的・文化的・政治的問題に集中させていったこと、B組織と機構の上での一致・合同に関わりすぎていたこと、C伝道の現場からの人々よりも、いわゆる教会指導者たちが主勢を占めていたため、宣教の問題よりも教会政治的色彩の強い会議に傾斜したことでありました。
V.ローザンヌ会議
そのような状況に対する反省に立って持たれたローザンヌ会議は、聖書信仰に立って伝道している現場の伝道者・宣教師たちを中心に、文字通り世界大の伝道と四つに組んだ福音派の会議でありました。
a.リベラル派:情況性=決定因
今世紀における政治的・経済的領域の西欧世界の後退と第三世界の台頭は宣教事情にも革命的な変化を呼び起こしてきました。西欧化の歴史観をもつ十九世紀的伝道論、つまり福音宣教のみではなく文化破壊の側面をもつキリスト教世界的発想を基調とした伝道論は、民族運動の中で崩壊の危機にさらされました。そのような背景の中で西欧教会の伝道論は再編成を余儀なくされていきました。ある議論の中には、主イエスの大宣教命令は「消滅し、無意味なものとなった」と混同する向きもありました。リベラルな西欧教会の内部には、すでに世界伝道へのビジョンの喪失、海外宣教師志願者の減少、海外宣教予算の削減という事態がでてきています。
このように、リベラル派の宣教論を見ると「情況性」というものが認識と行動を決する決定因となっていることがわかります。
b.福音派:情況の理解