ICI ホームページ表紙 継続神学研究 今日の神学界の状況 聖書解釈の三類型 二つの聖書観 福音派の定義 ローザンヌ誓約 宗教の神学の座標軸 福音主義の流れ
福音主義の流れの形成
16/04/13
前回は、挿入として、「宗教の神学」の視点からオウム真理教問題を考えたわけですが、流れとしては前々回までの「福音派の定義とその内容」が中心テーマです。私たちが・自らの神学的アイデンティティ・を模索していくときには、広い意味で「福音派の一員として」の自らの位置を確認すべきなのです。今回は福音派の歴史的輪郭(縦軸)と今日の福音派の多様性(横軸)をみていきましょう。
T.福音派の歴史的輪郭(縦軸)
福音派は、歴史的・教理的ルーツとそれとの連続性を何よりも大切にすることを特色としています。このことは、具体的には、「聖書に書いてあるとおり」をその展開の究極的原点とすることをはじめとして、公同信条に表明されている古代の正統信仰、十六世紀宗教改革の神学、近世の福音主義諸信条、十七世紀のプロテスタント正統主義、ピューリタニズムを含む近代の敬虔主義と信仰復興運動との深い結びつきを常に意識しています。・・基本的に宗教改革の立場を強調していた十九世紀中葉の英国プロテスタントの基本的信仰の反映と見られる福音主義同盟の九箇条(継続神学研究D)ならびにローザンヌ誓約(継続神学研究D)を共通に認めています。
私たちがKBI在学中に学んだエーリッヒ・ザウアー「世界の救いの黎明」は戦後ドイツの福音主義神学者でありますし、ヘンリー・シーセン「組織神学」は戦後アメリカの福音主義神学者であります。そのような意味でも、私たちは福音主義神学の歴史的的遺産の相続者のひとりなのです。
U.現代福音派の主要潮流(横軸)
今日の福音派はモザイクのように多様であるといわれています。R.ウェバーはアメリカの福音派を14に分類していますが、それは少しきめこまかいので、R.ケヴドゥーや宇田進師の分類をみてみましょう。
今日、福音派は、@反リベラリズム、反世俗主義、反共産主義、反WCCの姿勢をもつところの・分離主義的ファンダメンタリズム・、A一種の聖書主義といわれるディスペンセーション主義をとる戦闘的でない・穏健ファンダメンタリズム・、Bアメリカ的現象としてのファンダメンタリズムの反知性的体質、他界主義的傾向、分離主義対決主義を脱皮しつつ、公同性と現代性を追及する・脱ファンダメンタリズム的福音主義・、Cルター派、改革・長老派、聖公会、メノナイト派などの歴史的教会の流れの中で継承されている・告白主義的福音主義・、D福音派内の比較的進歩主義の立場・進歩的福音主義・、E聖霊による刷新を旗印とする・カリスマ的福音主義・の六潮流に類型化されています。(詳細は下記参考文献参照)
V.・真正・の福音主義の模索
このような多様化の状況の中で、・真正の・福音主義をもとめつつ、アイデンティティ問題が議論されています。わたしたちとしても、歴史的縦軸と今日的横軸の中に、自らを正しく位置付け、自らの召命と賜物を確認し、・真正の福音主義(authentic
Evangelicalism)を模索していくことが今後の課題のひとつだと思います。
[参考文献]「福音主義キリスト教と福音派」、「総説現代神学」『福音派の神学』、宇田進
・Common Roots・ A Call to Evangelical Maturity, R.E.Webber